秘密の地図を描こう

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 カナードがやってきたのはラクスとミーアがとりあえず自分達の好奇心を満足させたときだった。
「……仮面……」
 彼が持ち込んできた写真を見て、真っ先にバルトフェルドがこう呟く。そのまま彼は視線をラウへと向けてきた。
「私が勧めたわけではありませんが?」
 何でも自分のせいにするのはやめてほしい。そう思いながら言い返す。
「顔を隠す、と言う点で真っ先に思い浮かぶ方法がそれだと言うだけでしょう」
 違いますか? と彼は続けた。
「もっとも、あの仮面自体に仕掛けがある、と言う可能性も否定はしません」
 彼が本物であるのなら、とため息とともに告げる。
「確かにな」
 そんな研究もあったはずだ、とバルトフェルドもうなずいて見せた。その隣で、カナードもさもありなん、と言う表情をしている。
「ラウさん……バルトフェルド隊長にカナードさんも何を言っているのですか?」
 しかし、キラは意味がわからないらしい。いや、想像もしたことがないのだろう。
「簡単に言えば、あれでマインドコントロール状態を保持しているのではないか、と言うことだ」
 今の連中の技術でも、そのくらいは可能だろう。淡々とした声音でカナードが言った。
「あいつらにしてみれば、自分達以外の人間はただの道具だからな」
 そう言うことだ、と彼は続ける。
「お前が気にすることではない」
 ただ、そういう連中と戦わなければいけない。その事実だけを覚えておけ、と彼は締めくくった。
「……俺のセリフがなくなったな」
 苦笑とともにバルトフェルドがそういう。
「どちらにしろ、あの男の身柄を確保しなければ話は進まない。そう言うことだよ」
 確認するもしないも、とラウは告げる。
「……わかっています」
 それでも割り切れないのだろう。キラは表情を曇らせたままだ。
「ともかく、一両日中にまた、両軍は激突するだろうな」
 そのときにどうするか。今から考えておけ、とカナードは言う。
「この情報は向こうにも?」
 話題を変えようとラウは問いかける。
「一応報告はしてある。依頼主はあちらだからな」
 もっとも、と彼は続けた。
「お前らのそばにいるのもあちらの依頼だ」
 厄介者の対処をしろ、と言われている。彼はそう付け加える。
「その方が気が楽だろう?」
 自分で対処するよりも、とカナードはキラを見つめた。
「そうかもしれませんが……」
 しかし、とキラは続けようとする。
「安心しろ。死なない程度に手加減をしてやる」
 そのくらいで妥協しろ、とカナードは笑った。
「まぁ、そのくらいはいい経験だろう」
 バルトフェルドもうなずいてみせる。
「そうだね。君以外にも勝てない相手がいると自覚させるのもいい経験だろう」
 そうでなければ、無駄なプライドだけが彼に残されるのではないか。ラウもそう言う。
「どうやら、私は出撃できるかどうか、微妙なところらしいから、カナード君がいてくれるのはありがたい」
 調整に手間取っているらしい。だが、メビウス・ゼロを手がけたことがある所為か、ドラクーンシステムそのものの調整には困っていないようだ。
「まぁ、それは仕方がないな」
 機体がないのでは、とバルトフェルドもうなずく。
「カガリがおとなしくしていてくれるなら、俺がキラのフォローに回るところだが……無理だからな」
 だが、彼女の気持ちを考えれば仕方がない。そう彼は言った。
「こいつのフォローは俺がする。あいつにはせめておとなしく守られていろと言っておけ」
 戦場に出てきてはいいが、とカナードは言う。
「素直に聞き入れてくれればいいんだけど」
 無理だろうな、と呟くキラに、誰もが苦笑を浮かべつつもうなずいて見せた。

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